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【インタビュー】身近な人を幸せにするために、農業の課題を解決したい | 秋元里奈さん

time 2017年03月25日

【インタビュー】身近な人を幸せにするために、農業の課題を解決したい | 秋元里奈さん

今回は2016年11月に起業して走り始めているあきりなさんこと、秋元里奈さんのインタビューです。農業に込めた想いと今の選択に至った原体験を中心にお伺いしてきました。

秋元里奈さんプロフィール
慶応大学理工学部卒業後、2013年にDeNAに新卒で入社。昨年11月に株式会社ビビッドガーデンを創業し、現在は計5名で4月にサービスのリリースを目指している。

 

根本にあるのは空き農地への課題

外山:今日はよろしくお願いします!まず今やっていることを教えてください。

 

秋元:農家さんが消費者に直接農作物を届けられるサービスの立ち上げをしています。もともと実家が農家だったのですが、現在はほとんどが有休農地となってしまっていることに課題を感じ、農業ビジネスを始めようと思いました。最初は空き農地のマッチングサービス、シェアリングエコノミー的なことしたいなと思っていました。

 

外山:空き農地という課題から今のサービスはどのように生まれたのでしょうか?

 

秋元:空き農地ができてしまっている理由をはシンプルに考えると、高齢化で農家さんが減っていることです。さらに深掘りしてみると、高齢化している理由は跡継ぎがいないから、そして跡継ぎがいない理由は「農業は儲からない」と一般的に思われているからだという結論にたどり着きました。
生産者が儲かりづらい構造が根底の問題にあるのであれば、まずはそこを解決しないといけないと考え、農家さんが消費者に直販できるECサイトを作ることにしました。
今の流通だと間接の業者が多くて農家さんの手に渡る利益が少なくなってしまうんです。直販であれば、農家さんの手に渡る利益が増え、「農家は儲からない」という状況を変えることができるのではないかと考えています。そうしたら、農家さんも若者に跡を継いでもらおうと考えるようになり、空き農家も減っていきます。なので、最初に思っていた空き農地という解決したい課題は変わっていません。

 

外山:野菜配送のECサイトを結構見かけることがあるのですが、どこが違うのでしょうか。

 

秋元:「直送」というのが大きな違いです。誤解している人も多いのですが、今ある野菜配送サービスの多くは、一度その中間業者の倉庫に集められた野菜を消費者用に梱包して送っています。つまり、本当の意味では「産地直送」ではないんです。この仕組みは非常に効率的で、多くの消費者に一定品質の野菜を届けるためには不可欠な仕組みなのですが、一度倉庫に集める必要があるためにどうしても鮮度は落ちてしまいます。また中間マージンも大きく取られてしまうので、農家さんの利益も少なくなってしまいます。
私の作っているサービスは本当の意味での「産地直送」にこだわっています。梱包も農家さんにお願いし、中間業者を極力省くことで農家さんの利益率も高く、顔の見える取り引きを実現したいと思っています。

 

外山:だからあきりなさんのサービスは、生産者からの直送にこだわっているんですね。

 

秋元:先ほど話したように野菜配送のECサイトの競合は複数個ありますが、農業の業界は小さいので、農家さんを紹介してくれたりということもあり、とても助かっています。みんなでがんばっていこうっていう雰囲気があります。

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▲あきりなさんが岡山でお会いした農家の方(健託農場 岡田さん)

 

外山:具体的にどのように農家さんから野菜が届く仕組みになるのでしょうか。

 

秋元:サービス上で注文が入ったら農家さんに直接消費者の情報が伝わり、指定された曜日に商品を発送してもらいます。先ほどもご説明した通り、「収穫してすぐのものが届く」というのがコアバリューになるので、農家さんには収穫後なるべく早く送ってもらうようにお願いしています。

 

外山:となると、今は農家さん探しが一番大きな業務なのでしょうか。

 

秋元:はい、今は頻繁に出張にいっています。今までは東京近辺が多かったんですが、オーガニックに特化した農家さんだと、作る地域によって作れる作物がかなり変わります。
そこで商品数を増やすためにも全国をまわるようになりました。最近も、四国、中国地方、東北と出張を重ねています。

 

外山:起業してから大変だったことはなんですか。

 

秋元:サービスの方向性が決まるまでが大変でした。起業したてのころ、記事に取り上げられたことをきっかけに様々な人に事業内容を説明する機会が増えたのですが、色んなアドバイスを受けて混乱した時期がありました。
事業を継続的に続けるためには、当たり前であるがある程度稼がなければならない。一方で収益性を突き詰めて考えると本来やりたかった「農家さんの収入をあげる」という目的から遠ざかってしまう。そんな風に色々悩みながらも人に会うことはやめずに、様々な観点からアドバイスを受けました。
そのうちに自分の事業軸が見えてきて、結果的に自分の納得する事業プランにたどり着くことができました。まだまだ未熟な点も多いので、日々勉強です。

 

 

お母さんへの想いから生まれた農業というキーワード

外山:どうして農業というキーワードにたどりついたのでしょうか。

 

秋元:町塚さんとの※1on1で「どういうときに人生の中で一番うれしかったか、楽しかったか」という問いから、お母さんという軸がでてきました。お母さんが喜ぶために何をしたらいいのか考えていって、母がやっていた農業にたどりついた、という感じです。母は高齢でかつ一人で暮らしていたので、心配だから人を集めたいなと。

 

外山:もともとDeNA入ったのも力をつけておこう、みたいな意図だったと聞いたことがあります。

 

秋元:そうです、就活のときはやりたいことがなかったから、やりたいことが見つかったときにできるようにしておこうと思って。DeNAでは3年半で4個のサービスに関わりました。

 

外山:DeNAの中で特に楽しかったのはどういうときでしょうか。

 

秋元:0から1のフェーズでサービスを立ち上げたときです。自分が作ったものがお金になったことがすごくうれしかったんですよね。ですが、結果的にそのサービスがなくなってしまい、そのときに自分の力が及ばない部分でサービスがクローズしてしまうこともあることを学びました。大企業だからこそできることもあると思うんですけれど、自分が本当にやりたいことを見つけたら起業しようと決めたのはこのときです。興味がないところからやっているうちに想いが入ったサービスであってもクローズしてとても悔しかったので、一生かけてやるぞって決めたサービスだったらもっと耐えられないなと。
DeNAでは自分の力以上の仕事も任せてもらえて、それ自体は楽しかったのですが、「一生をかけてでもやりたい!」みたいな気持ちにはなれなかったんですよね。やりたいことがないと悩んでいた時に町塚さんと出会って、農業という軸を見つけました。生まれた時から身近にあったが故に、農業をビジネスとして考えることがなかったんですよね。そこからは早くて、とにかく農業に100%コミットするために会社を辞めることにしました。
※1on1・・・ワークルの運営メンバーと月に1回行う振り返り面談

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▲あきりなさんが特に思い入れのあるサービスに関して取材を受けたとき(撮影 関口達朗)

 

 

仲間と新しいものを立ち上げる楽しさが原動力

外山:もともと起業したいと思っていたんですか?

 

秋元:いえ、全く(笑)。高校時代は将来は株のトレーダーになりたかったので、金融工学を学ぶことができる慶応の理工学部を選びました。当時母が少し株をやっていて、進路の話をしている時に冗談まじりで「株を勉強したら、お金10倍くらいになるんじゃない?」って言われたのがきっかけです。高校生らしく安直ですよね(笑)。今思い返すと、大学の選択も母の意向が大きな要因になっていました。
こういう話をするとマザコンなのかと思われるのですが、そういうわけでもないです。どちらかというと、女手一つで育ててもらった恩返しをしたいという気持ちが強いです。

 

外山:大学のときは何をされていたんですか?

 

秋元:学園祭の実行委員をやっていました。それが一番自分が大きく変わった出来事です。最初は「過去問が手に入るから」というヨコシマな理由で入ったのですが、とにかく楽しくて、気付いたらのめり込んでいました。

 

外山:何が変わりましたか?

 

秋元:新しいものを仲間と立ち上げる楽しさを知りましたね。リーダー的なポジションは苦手という意識が強かったのですが、同期がみんなやめたので必然的にリーダーになってしまって…。でも最終的にやりきれたときの達成感がすごくて。このときに感じた達成感を最後にしたくないから、0から何かを立ち上げる仕事がしたいと思い、DeNAに入りました。

 

外山:一番思い出に残っているイベントはなんでしょうか?

 

秋元:ジョジョ立ちコンテストです(笑)。

 

外山:すみません、ジョジョ立ちってなんですか?

 

秋元:知らないですよね(笑)。ジョジョ立ちっていうのはジョジョの奇妙な冒険っていう漫画の中に出てくるポーズのことなのですが、その完成度合いを競うコンテストをやっていました。理工学部の学園祭だったので、意外とウケは良かったです(笑)。当初ジョジョは読んだことがなかったのですが、先輩から借りたコミックを車に積み込んで、「ジョジョ合宿」という名目で日光でひたすら漫画を読み込み、日光東照宮で実際にジョジョ立ちをしたりして理解を深めていきました。
ジョジョは一例ですが、ミスコンなども含めたメインステージ企画のリーダーだったのでとにかく全体的に想い入れが強く、学園祭前の1週間はほとんど寝ずに作業をしていました。
それで、学園祭が終わった瞬間に体力の限界がきたのか倒れるように寝てしまい、起きたら片付けが全部終わっていた…というのも良い思い出です。

 

ワークルは起業のきっかけになった場所

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外山:ワークルで得られたことを教えてください。

 

秋元:外部の方を招いたイベントでプレゼンの機会をいただけたことは大きな糧になりました。プレゼンをきっかけに大企業の社長さんと繋がったり、他の方からも評価をいただくことができて自信がつきました。
あとは、町塚さんとの1on1を通して何をやりたいかを端的に見ることができるようになりました。利益性を求めるべきかどうか悩んだときにも、自分は農家さんのためにビジネスをやりたいという想いに立ち戻ることができましたし、収入がなくなって不安なときもやっぱり私がやりたいこと農業だな、と意志を確認することができました。なので、ワークルがなかったら起業できていなかったと思います。

 

 

編集後記

今回はあきりなさんの農業というキーワードから「持続可能な農業」を掲げている株式会社坂ノ途中が経営している坂ノ途中soil キョードーという八百屋さんで撮影を行いました。こじんまりとした雰囲気が素敵な八百屋さんでした。

 

あきりなさんのバックグラウンドの結晶ともいえる、今のサービス。週7働いていてもお金がたくさん稼げるわけではないけど、楽しいと話していました。きれいなお姉さんという雰囲気の背景にある熱い想いがとても魅力的な方でした。

【撮影協力】
坂ノ途中soil キョードー
健託農場
【写真提供】
MarkeZine(撮影 関口達朗)
 
 
ライター: 外山

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