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【インタビュー】受け身ではない新しい演劇で誰かの明日を変えたい | 佐藤璃子

time 2017年01月08日

【インタビュー】受け身ではない新しい演劇で誰かの明日を変えたい | 佐藤璃子

今回はInterActingという演劇を用いたワークルを行っている佐藤璃子さんにインタビューをさせていただきました。
璃子さんの演劇に対する想い、仕事とワークルを両立しているライフスタイルを中心にお伺いしてきました。

InterActingは誰かのために演じるやさしい演劇

外山今日はよろしくお願いします。まず、今ワークルでいまやっていることを教えていただけますか。

 

佐藤:InterActingという、自分自身や他人の過去や未来を即興で演じる活動をしています。
毎回6人くらいで集まり、1回につき2人程のエピソードを演劇にしています。一人がエピソードを語り、即興劇にして、みんなで振り返るという一連の流れを2-4時間程かけて行います。全員でたった一人にじっくりと向き合うので、時間がかかるんです。
普段演劇というと受け身で観るという人が多いと思うんですが、演劇を「自分の心を主役にする」ことに重きを置いた 新しい形で活用することで、マインドや明日からの一歩を変えてほしいと思って始めました。

 

外山:InterActingが生まれたきっかけはなんだったのでしょうか。

 

佐藤:私は一回ワークルを立ち上げたのですが、途中で違和感に気づいてやめたんです。その後数ヶ月は何となく心に引っかかるものを探してました。
そのときにワークル会員で演劇に興味がある人たちで集まる会があり、そこでInterActingが生まれました。それぞれが演劇への想いを語り、演劇を今までとは違う形で活かしてみたいという観点でブレストをして、まずは個人個人のストーリーを即興でやってみよう、となったんです。そこで今一緒にInterActingをやっている荒川の過去を題材にして演じてみました。彼の過去はとても深いもので、その深さに応えるべく、みんながとにかく彼のためにいいものを創ろうと、その場に引き込まれていきました。初めて出逢ったメンバーであるにも関わらず、ものすごく温かくて熱い世界ができあがり結果としては、すごく良い演劇が出来上がっていました。
消化しきれない過去のもやもやをInterActingで演劇にしてみることで、もやもやは解決はしないんですが、違う視点を持てるようになって、過去に対する想いが変わるんです。

 

外山:私も一回やっているので、すごくわかります。嫌な記憶もとらえ方が変わり、良い面の方が大きくなりました。

 

佐藤:そうそう。私は過去ではなくて未来を題材でやったことがあったときも、新しい気づきがありました。私が勝手になんとかなるだろうってい思い込んでたテーマもInterActingでやってみたら、演じたあと周りの関係する人たちと考えないと話さないとっていうマインドに変わって。InterActingはみんなで誰かのもやもやに立ち向かう、誰かのために考えるやさしい演劇だと考えています。

 

外山:本当にその通りで、私の題材で演じてもらったとき、私の時間が1時間半あって、みんなが私のために劇をしているっていうあの場がすごいな、と。
最初台本を作るときに璃子さんにかなり記憶を掘り起こしてもらったんですけど、何を考えて掘っていくんですか。

 

佐藤:初対面の人に対してどこまで掘っていいのか迷いはするんですが・・・、根幹となる痛みを捕まえる感じかな。自分のときは町塚と荒川が掘ってくれたんですけど、いざ掘られる側になったら本当に痛くて、すごい恥ずかしかったです(笑)。

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外山:私はInterActingに参加する前、何かを演じるってことに対してハードルがあったので、マイナスの記憶をテーマには出せなかったのですが、やったあとはマイナスな過去をやればよかったって思いました。

 

演劇に対するモチベーション、原動力は何になるのでしょうか。

 

佐藤:演劇を中学1年生から大学2年生までがっつりやっていて、5分の4くらいの時間を演劇に使っていました。演劇って、たった数時間のために余裕で4か月かけるくらい非効率で、だから採算も合わないんです。いかにお客さんを感動させられるかというところを核に話していくので、感動してもらえたときの達成感はこのうえないものではあるのですが・・・、あるとき、たとえ感動してもらえて、メッセージを伝えたとしても、その人たちは次の日から何か変わったのだろうかと、疑問に思ってしまって。
ちょうどそのときに私がやっていた演劇が、「みんな自分の好きなことをしたいけどなかなかできない現実がある」ということをテーマにしたものでした。私はミュージカル女優になりたいけど仕事と折り合いがつかなくて悩むっていうOLの役で、観客が自分のやりたいことに少しでも向き合って、実行したいな、という「変化」にまでつながってほしいと思って役作りをしていたんですが、私の実力不足で手応えはありませんでした。
私自身も、何かを観て次の日から行動を変えた作品があるかといわれるとない。そしたら何のために、こんなにメッセージ性を強くしようとしているのか、時間とエネルギーをかけて演劇をするのか、わからなくなってしまいました。
じっくりと効果が出てくるのが演劇の良さだと思いますが、私は次の日の一歩を変えるまでデザインされた、演劇を活かした何かを創ってみたいと思うようになりました。

 コツコツ頑張る人に幸せになってほしい

外山:先ほど少し話していた、InterActingの前のワークルでやっていたことについて教えてもらえますか。

 

佐藤:オモチャットというサービスのローンチを目指してました。オモチャットというのは、おもちゃと人の関係性が築き、おもちゃ目線で子どもの様子を見ることを目的とした、おもちゃが話すことができたり、記録できたりするサービスです。学生時代、NTTの技術を使って新しいものを創り、良い企画を事業化するという主旨のインターンで、サービスを開発していました。私にとっては世の中にリリースできる点が魅力的で、無事優勝したんですが、社内の事情で私たちのサービスはリリースできなくなってしまったんです。それがすごい悔しくて、社会人2年目のときに再チャレンジしました。
学生インターン当時のメンバー構成は技術者2人、私含めインターンの学生が2人の、合計4人でした。コアの技術は、技術者の人は毎日言葉をコツコツデータにいれていく、すごく地道な作業の積み重ねによるものでした。技術者の方々の夢が「永遠に使われるロボットを作ってみたい」であることを知って、途中から面白いサービスを創りたいというよりも技術者さんになんとか日の目を見てもらいたい、幸せになってもらいたいという気持ちが強くなっていきました。

 

外山:この”技術者の人のために”という想いの強さには自分の原体験があったのでしょうか。

 

佐藤:技術者の人たちっていつもやりたい技術に向き合えるわけじゃなけれど、それでも自分たちが作りたいものを作りたい、それで何かを感動をさせたいという想いを持って、技術に立ち向かっているんです。その根幹が演劇と同じでとても共感していたので、幸せになってもらいたいという気持ちが強くなったんだと思います。
でも、社会人2年目でもう一度一人でローンチを目指していたとき、最終的には面白くなくなってました。それは一緒にやっていた技術者の人たちがいなかったから。一次審査は通ったんだけど、二次審査前日に事業計画たてないとってなったときにどうしても億劫になっちゃって。みんなで創ったものなのに自分がリリースさせることが嫌だったんです。

 

外山:そこでInterActingにつながるところだと、一緒にやる人が大切だったりするのかと思うのですが、荒川さんの存在が大きいんでしょうか。

 

佐藤:それはあるかも、荒川がやらないって言ったらやらないってなるかもしれないですね。

 

自分の会社を消費者に愛される会社にするために

外山:今の会社はジッパーを作っている会社だとお伺いしたことがあるのですが、どうして今の会社に入られたんですか。あまり演劇とつながりはないように思って・・・。

 

佐藤:入社当時にやりたかったことは、何もないところにジッパーをくっつけることでソリューションを提示すること。大学で学んできたデザイン思考を実際のビジネスで活用して、ものを作りたい想いがありました。
でも今はやりたいことが変わってきていて、簡単にいうと会社の広告とブランディングに興味を持っています。というのは、うちの会社ってすごくまじめで当たり前にやっていることがアピールの材料になるのに、PR下手なんです。例えば、排水処理と聞くと工場周辺地域に迷惑をかけているというイメージがあると思うんですが、うちの富山の工場だと排水処理後の川が一番きれいなんですよ。オモチャットの技術者の人と同じように、コツコツやってきたことはもっと日の目を見るべきだし、活かすべきだな、と。

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外山:真面目にやっていることをもっと人に知ってもらいたい、というところでオモチャットと今の仕事は似ているんですね。今は仕事で具体的に何をされているんですか。

 

佐藤:事業本部長直轄の事業企画室に配属されています。本部長秘書と、事業計画と比較して各事業会社が動けているかをPDCAを回しながら確認するための主要会議の運営サポート、そして広告の3つが主な業務です。組織図でいうと技術系と営業系の部署両方を俯瞰する位置にある部署なので、各部署の活動をつなげないと発展しない部分を引っ張っていくことが大切です。現在広告の部署がないので、特に広告業務に関しては各部署をつなげることを意識して携わっています。

 

外山:とても高い視点が求められそうなお仕事ですね!、、今の仕事にもしっくりきてるんですか?

 

佐藤:うん、どんどんしっくりきてる。秘書業務は向いてないと思ってたから最初はつらかったんですが、途中から広告業務も関わらせてもらえるようになり、本部長の資料を作る中で得た知識を広告業務に活かせることができるようになって、学びと実行のサイクルができているところです。先ほど言ったような排水処理など、うちの会社が当たり前のように積み重ねてきたいいことを上手に伝えてうちの会社を愛してもらえるようにブランディングしていきたいと思っています。

 ワークルは、飲み会よりもたくさんのことが得られるコミュニティ

外山:今後InterActingをどのようにしていきたいのか、教えてください。

 

佐藤:対個人のイベントのような形で行うことももちろん続けつつ、企業とやることでInterActingの規模を拡大していきたいです。外部組織とコラボする話も少しずつ進んでます。
最初はこんなニッチな活動にニーズがあるのか不安だったんですが、半期発表会のプレゼンが終わった後にたくさんの人が集まってくれました。様々な分野の人が、自分の軸を変えてみること、ビジネスの分野に演劇を取り入れてみることに可能性を感じていることがわかり、自信になりました。
あとは、いつかはInterActingをビジネスにしたくて。演劇を仕事としてやりにくい理由のひとつにお金を稼ぎにくいというのもあるので、例えば、役者のひとつのお小遣い稼ぎにできるようにしたいですね。

 

外山:私はワークルをやっているとワークルにもっと時間割きたいのに物理的に難しいっていうせめぎあいもあったりするんですが、璃子さんはいかがですか。

 

佐藤:めちゃめちゃある。プライベートで大切な人と一緒に過ごす時間も大切にしているので、それに加えて仕事、ワークルという3つの両立は大変ではあるのですが、荒川と一緒にうまく役割分担しながら進めることができているかな。荒川はビジョンを大きく掲げ、私は具体的にどうしていくかを決めていく、という感じですね。

 

外山:荒川さんが描いているビジョンとは?

 

佐藤:「間をデザインする」こと。色々な間があって、自分と過去や自分と未来、自分と他者、対社会とか。演劇をすることで、何かと何かの関係性が変わったり、何かをちょっと前に進めたいと思ってほしい、という想いが根本にあります。
ビジョンは荒川が掲げたものではあるけれど、InterActingは荒川が主役だと思っているし、ビジョンが抽象的だからこそ私がやりたいことである、演劇を通して人を変えること、お金を上手く回していくことにもつながっています。

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外山:ワークルで得られていることを教えてください。

 

佐藤:私はひとつの世界だけに所属しているのが嫌なタイプなんです。会社も家族も満たされてはいるんだけど、ひとつの世界だけになって視野が狭くなっていくというのが恐怖で。そういう意味で、異質なものを取り入れやすいのがワークル。町塚の「飲み会代をワークルの会員費に」というコンセプトと価格がしっくりきていて、確かに、ワークルで得られることは飲み会で得られることより明らかにたくさんあると思います。

 

編集後記

一見つながりのないように見えるInterActingと璃子さんのお仕事ですが、「誰かを幸せにしたい」という想いが根本にありました。

璃子さんにとっての演劇のように、好きなことがあるけれど、それを仕事にはできない、という人には大きな生き方のヒントになったのではないでしょうか。

 

InterActingの開催情報はワークルのFacebookからお問い合わせください。

 

参考URL

メンバー紹介記事(会員限定)

 

 

(ライター外山