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【インタビュー】「発達障害者のためのプログラミング講座」から学ぶ、30年後の社会を創るヒント | 河崎純真さん

time 2017年09月01日

【インタビュー】「発達障害者のためのプログラミング講座」から学ぶ、30年後の社会を創るヒント | 河崎純真さん

プログラミングやデザインの技術は、今や多くの人が学ぶスキルです。

「発達障害者」も、その例に漏れません。

 

今回は、渋谷でプログラミングやデザインが学べる、発達障害者向け就労移行支援を行う河崎純真さんにお話を伺いました。

 

「偏りを活かせる社会を創りたい」と語る河崎さんから、未来の社会を創るためのヒントが得られるでしょう。

<プロフィール>
河崎 純真さん
GIFTED AGENT株式会社代表。
「偏りを活かせる社会を創る。」を理念に、大人の発達障害者がプログラミングやデザインを学べる就労移行支援「GIFTED ACADEMY」を開講。

一人一人の特性を、活かせる社会を創りたい

佐藤:GIFTED AGENTでは具体的にどのような事業を行なっていますか?

 

 

河崎:「偏りを活かせる社会を創る。」を理念に、大人の発達障害者に向けた就労移行支援「GIFTED ACADEMY」を渋谷で行なっています。受講生にはプログラミングやデザインの講座を受けてもらい、人材紹介事業として企業にご紹介しています。

 

現在は40名ほどの方に受講していただいき、VRエンジニアとして2名が就職、データサイエティストとして1名が就職、VRデザイナーでも1名就職が決まってます。

受講後この事業自体を手伝ってもらっているメンバーも5,6名いますね。

 

日本には潜在的に600万人の発達障害者がいると言われていて、25万人が診断を受けている状況です。子供の発達障害者向けの支援はさまざまなものがあるのですが、大人向けの支援はあまりないのが現状です。

 

GIFTED ACADEMY事業から、100万人の発達障害者の雇用創出を目標にしています。

 

 

佐藤:「偏りを活かせる社会を創る」ために、どんなことを大切にしていますか?

 

 

河崎:まず発達障害者が持つ“偏り”を正しく認知するということが大切です。

 

発達障害というのは脳の機能発達に障害があるということなのですが、身長が高い低いなど見た目に差異があるように、脳にも差異があるんです。

 

人によっては周りの空気を読むのが苦手だとか、自分のことを認知するのがすごく苦手な人とか、時間管理がすごく苦手とか。さまざまなタイプがあります。

 

発達障害の方が受けてきた今までの療育(障害児が医療的配慮のもとで育成されること)で多いのは、苦手なことを克服することなんです。

 

例えば、時間を守るのが苦手だから時間を守る練習をしようとか、コミュニケーションが苦手だからコミュニケーション訓練をしよう、といったものです。

 

でも、目が見えない人に目が見える訓練はしないし、足がない人に走る訓練はしないですよね。なぜか発達障害は、治る前提で療育を行うんです。

 

そこに違和感を覚えたため、GIFTED ACADEMYでは「苦手は克服せず、得意を圧倒的に伸ばす」ということを重視し、コンセプトにしています。

 

発達障害をその方の“特性”と捉えるんです。

 

得意・苦手を認め合い、企業にもしっかりと伝える就労支援

佐藤:就労支援のプログラムとして、プログラミングやデザインを選ばれたのも、“特性”に合っているからなのでしょうか。

 

 

河崎:発達障害の方は人によって苦手なことがさまざまあるのですが、得意な部分もすごくあって、プログラミングやデザインは才能を活かしやすいんです。

 

また働き方の面でも、発達障害者それぞれの特性にあった働き方ができる可能性が高いです。遠隔で働いたり、コミュニケーション能力というより、技術や結果で評価されたり。人間関係が苦手という方にとっても働きやすい職種だと言えます。

 

また、企業に紹介する際にも工夫をしています。

 

発達障害者だということをオープンにするのはもちろんですが、働く上でどうしても苦手な部分、得意な部分というのをまとめて、一人一人に合わせたナビゲーションブックを作成して企業に渡します。

 

 

佐藤:GIFTED ACADEMYでは、直接的にスキルを教える側面と、“特性”に配慮しながら対人的なサポートをしていく側面があると思います。運営メンバーそれぞれに役割があるんでしょうか。

 

 

河崎:そのあたりはまだ完全に構造化はできていないのですが、スキルを教えるという側面では講師として、未踏エンジニアが3名います。

 

未踏エンジニアとは、IPA(情報処理推進機構)が行なっている優れたクリエイターを認定・支援する制度によって認定されたエンジニアのことです。全国約300名中の3名がGIFTED ACADEMYの講師です。

 

プログラミングやデザインはスキルなので、目的ではありません。受講生の中で、“プログラミングをすることそのものが目的”という人はほとんどいない。「仕事を得たい」という思いでGIFTED ACADEMYにやってきます。

 

だからこそ、しっかりとした講師陣を揃えることによって、仕事をする、自立するというところまでサポートをしています。

 

また、プログラミングやデザインなどのスキルを教えること以外にも、フェルデンクライスというボディワークを導入したりしています。これは世界三大ボディワークの一つで、体に問いを与え、能力を引き出すメソッドです。

 

この場の“コミュニティづくり”といった側面でも様々な課題に出会いながら、模索している感じですね。

 

 

佐藤:どのような課題があると感じますか?

 

 

河崎:僕は、受講生と講師陣をフラットに見ていて。この両者を含めたものをコミュニティと捉えているのですが、この中にも2パターンいるので、どう共存させるかが課題かなと感じます。

 

コミュニケーションが苦手なタイプと、得意なタイプの方がいるんです。僕としては、コミュニケーションが苦手なタイプが多く集まるだろうと考えていたため、コミュニケーションはあまり取らなくて良い設計にしていたんです。

 

でも、むしろコミュニケーションがとりたい!という方も多くいて。そういうところは課題かなと思います。

 

ただ基本的には一人一人の「自由」を尊重していく方針です。そのため、フレックスタイム制のような形で受講してもらっていますし、強制的に参加のイベントなどはほぼないですね。

 

安心感を持って学び合い「意識家族」を創りたい

佐藤:今後は、どのような事業展開を考えていますか?

 

 

河崎:今描いているテーマがあって。

僕は「会社をやる」というか「社会を作りたい」と思っています。ここでいう社会とは「意識家族」です。

 

受講生やここに集まる人々が「意識家族」として安心感を持って学び「love」と「power」を持って一緒に成長していける場所にしたいと考えています。

 

家族とは3つの定義があるんです。一つは定義家族。これは自分の生まれた家族のことです。二つ目は生殖家族。結婚した夫婦関係を基本とした夫・妻・子という形をとる家族のことです。

 

そして私たちが目指したいのが「意識家族」。これは、血は繋がっていないけれども家族的な意識を持った集団のことです。

 

そういう「家族」を作っていくというのが、この会社のゴールかなと思っています。

 

 

佐藤:「意識家族」をつくりたいと考えたきっかけには、どんなことがありますか?

 

 

河崎:これからの世の中がどうなっていくかということを考えた時に、2045年くらいには、国が数10万〜数100万に増えるなど分散ネットワーク化された社会に変化していくだろうと考えています。

 

現在は構造化された社会ですが、“共感”や“分散”が社会を創る鍵になるだろうという考えから、「意識家族」をつくりたいという発想に至りました。

 

冒頭に100万人の雇用創出をしたいとお話ししましたが、そんな社会の流れの中で、ここにいるメンバーはどんどん起業をしていって、事業を行っていってほしいと思っているんです。

 

そしてその時に「100万人の会社を1社」つくるのではなく「100人の会社を1万社」作りたいんです。

 

 

佐藤:その100人の会社の中で、意識家族のようなコミュニティが醸成されていくということでしょうか。

 

 

河崎:そうですね、そんなイメージです。

 

“GIFTED COMMONS”という構想なんです。

 

テンセグリティ構造(バックミンスター・フラーが提唱したTension [張力] とIntegrity [統合] で成り立つ構造のこと。上の写真で河崎さんが手にしている模型のようなもの。<)のように、関係性によって構造が成り立つようなコミュニティが創れたらいいなと思ってます。

 

一つ一つは独立して存在しているけれど、関係性が構造を生み出している。それがテンセグリティ構造。そういう100人の会社、組織、コミュニティを、ここからたくさん生み出していって経済圏を創っていけたらなと考えています。

 

参考URL

GIFTED ACADEMY

河崎純真「偏りを活かせる社会を創りたい」(会員限定)

執筆:佐藤由佳 (@y_lovearth
学生時代よりインタビュー活動を始める。
新卒入社した会社ではライフスタイル系オウンドメディアの運用を経験。
現在はフリーライター・インタビュアーとして、新しい働き方に挑戦中。
これまで50名以上をインタビューし、
社長、起業家、大学生、小学生、モデル、豆腐屋など
多様な人々の魅力を伝え続けている。
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